電車の中で本を読んでいる。白い紙面に日光が当たる、陰になる。その繰り返し。目がチカチカしてきて本から目を離す。前に高校生。制服が日差しに照らされて、鮮やかな紺色を映し出す。高校生は、スマホを見ながら、笑うのを我慢しているような顔をしている。
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空は明るくて、街には影が落ちている。夏は景色がゆらゆら揺れて、自身と世界の境界線が曖昧になっていた。今は頭がクリアではっきり見える。こんなに悲しかったっけ。こんなに、物事は直線的だったっけ。
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いつも使う駅のトイレに使用不可 何かしたっけと不安になる朝
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足音以外聞こえない地下通路を歩く。不気味なほど静かで、私は自然と息を止めている。近くの人から憂鬱な気持ちが移ってきて、私も強制的にどんよりと歩かされている。